公開日:2021/12/10
新型コロナウィルス感染者とベトナムの社会保険給付について
1. はじめに
2021年9月の後半から減少に転じていたベトナム全体におけるコロナの感染者は、10月の後半から再び増加傾向にあり、11月23日から12月8日現在まで1万人を超える感染者が連日報告されています。どんなに注意していても完全に感染を防止することは難しく、コロナの感染者であるF0となる方が会社に生じるのもやむを得ないといえます。
仮に、従業員がコロナの感染で自宅隔離または施設隔離を余儀なくされた場合の社会保険給付はどうなるのでしょうか。給与の一部を支給して従業員を援助しようと試みる会社等もあると思いますが、その場合の社会保険の給付がどうなるのでしょうか。本稿ではこの点について解説を行っていこうと思います。
2. 社会保険からの給付
1)傷病休暇を取得できる者
傷病休暇を取得できるのは、㋐労災に当たらない病気または事項により休暇を取る者で、㋑指定の医療機関が発行する必要書類を取得した者などになります(通達59/2015/TT-BLDTBXH号(以下「通達59号」といいます)第3条)。
特殊な事情がない限りはコロナへの感染は労災に当たらない病気となりますので、上記の㋐の条件を満たすことになります。
※傷病休暇については以前に別の記事にも記載しているので、必要に応じてそちらもご参照ください。
① 施設隔離の場合
施設隔離の場合、通常は社会保険給付の申請に必要な証明書が発行されるので、こちらの書類を用いて社会保険給付を申請することになります。
② 自宅隔離の場合
自宅での隔離の場合、社会保険給付を受けられるようにするには、通達56/2017/TT-BYT号に指定されているフォームに従って、指定の治療施設から証明書を取得する必要があります。当該証明書を取得しないと、社会保険給付を受けられない可能性があるので注意が必要です。
3. 隔離中に会社から金銭を支給する場合の社会保険給付
1)給与の場合
社会保険給付の制度は、社会保険基金に保険料を支払ったことに基づき、労働者が疾病場度を原因として休職をし、収入の喪失を余儀なくされた場合に、その喪失分を補完することを目的としたものです。したがって、給与の全部または一部の支給がなされている場合は、収入の喪失がないとして社会保険給付が否定される可能性があります。そのため、社会保険給付を申請する労働者は原則として給与が支給されていないことが要件となると解します。
2)その他の名目の金銭給付の場合
給与ではなく見舞金などの名目で従業員に金銭を支給する場合(但し過度に高額なものなどについては給与の支給と同視される可能性があるので注意が必要です)、収入は喪失していると解されているので、社会保険の給付が認められると考えます。
そのため、コロナに感染した従業員が社会保険給付を受けながら、会社からなにがしかの金銭補償を行いたいと考える場合、給与は支給せず見舞金などの名目で金銭を支給する必要があると考えます。