ベトナム情報 週刊コラム※毎週金曜日更新中

ベトナムの輸出入貨物に関する原産地表記の規制について

1 はじめに

ベトナム ホーチミン 輸出入貨物 原産地表示

昨今、アメリカと中国との貿易摩擦の悪化を原因として、中国産の製品をベトナム産と偽ってアメリカに輸出する迂回輸出が増大しているといわれます。
アメリカはベトナムにとって最大の貿易相手国(輸出先)ですが、ここ数年はアメリカが貿易赤字を計上し続けてきたことにより、米越間にも貿易摩擦が生じていました。そこにきて、今回の迂回輸出の増加ですから、ベトナム政府もこれ以上のアメリカとの関係悪化を避けるため、輸出に関する原産地表記についての取り締まりを強化しています。そして、これはベトナムから日本への輸出貨物についても同様です。
そこで今回は、ベトナムにおける輸出入貨物の原産地表記規制について、実際の法令の規制がどうなっているのか解説してみたいと思います。
なお、原産地表記については関税の優遇に関係する規定のため、日越経済連携協定に基づく規制等も存在しますが、今回の記事ではベトナム法令の規制に絞って論じていきます。

 

2 輸出入貨物の原産地表記に関する法令

ベトナム ホーチミン 輸出入貨物 原産地表示

輸出入貨物の原産地表記に関する規制が記載された法令として、外国貿易管理に関する法律(05/2017/QH14、以下「法」といいます。)、外国貿易管理に関する法律における製品の原産地をガイドする政令Decree31/2018/ND-CP(以下「政令31号」といいます。)と製品の表記(ラベル)に関するDecree43/2017/ND-CP(以下「政令43号」といいます。)、税関違反行政違反処罰に関するDecree127/2013/ND-CP(以下「政令127号」といいます。)等が存在します。

 

3 虚偽表記に関する規制

ベトナム ホーチミン 輸出入貨物 原産地表示

原産地の表記を偽る行為については、輸出貨物、輸入貨物ともに規制されています。法7条4項によれば、原産地の表記を偽って行う輸出・輸入のいずれも禁止となります。それにもかかわらず原産地を偽って行う輸出入を行った場合、当該貨物に課される税額の20%に相当する金額が罰金として科されることになります(政令127号8条2項a)号)。

 

4 輸入貨物に関する原産地表記

ベトナム ホーチミン 輸出入貨物 原産地表示

輸入貨物については、政令43号が、製品に原産地を表記することを要求しています(同政令10条1項c)号)。しかし、同政令は、ベトナムに流通する製品と輸入品を規制する法令であるため、輸出貨物については適用対象となりません。

 

5 政令31号

ベトナム ホーチミン 輸出入貨物 原産地表示

政令31号には、輸出品と輸入品の原産地を確定する方法が記載されています。輸出品と輸入品の原産地証明書(Certificate of Origin(C/O))を発行する条件、手続等が規定されています。これらの規制は、前記の関税の優遇のため、日越経済連携協定等(日越間でのみ関係する法令というわけではありません)に基づいて定められたもので、関税が適切に課されるように定められている規制です。したがって、概ね日本における規制と異なるものではありません。

 

6 輸出貨物に関する原産地表記

ベトナム ホーチミン 輸出入貨物 原産地表示

政令31号においても、輸出品について原産地を表記しなければならないことを定めた規定は存在しません。また、その他の法令中にも、輸出品に原産地表記を要求する規定は存在しません。
このように法令の規制が曖昧であり、また法令の運用についても適切に行われてこなかったことから、迂回輸出等に利用されてきた経緯があります。例えば、ベトナム企業が中国から輸入した材料のラベルを張り替え、米国に輸出していたケースも実際に摘発されています。

 

7 今後の対応等について

ベトナム ホーチミン 輸出入貨物 原産地表示

今年2019年6月9日、ベトナム税関当局は、原産地国偽装の取り締まりを強化することを声明として発表しました。また、アメリカでは、7月2日、ベトナムで最終加工後、アメリカへ輸出した一部鉄鋼製品を迂回輸出と認定し、最大450%を超える関税を課すことにしました。
このように輸出貨物の原産地規制違反に関するリスクが高まっている状況にありますので、今後行うべき対応等について考えてみたいと思います。
日本では原産地を誤認させるべき輸出貨物は、外国為替及び外国貿易法で輸出承認が必要な貨物として規制されており、そのような貨物については、仮に申請があっても原則として輸出が承認されません。原産地を誤認されるべき貨物として、日本の経済産業省は、
・原産地以外の国、地域及び都市名等の名称が記載されている場合
・一般に貨物の原産地に認められる開所の名称、又は、一般に貨物の原産地のものではないと認められる商標その他の図柄が表示されている場合
を例示しています。
日系企業の中には、輸出貨物に納品先の企業の名前のみ等を表記していた場合があり、このような場合には税関で検査の対象とされることがあるようです。これは、日本でも前記の例の二つ目に該当し、原則輸出が承認されない貨物になります。したがって、少なくとも日本法上の原産地を誤認されるべき貨物と認定されるような表記は避けるべきでしょう。
ベトナムメディアの報道によれば、政府は原産国偽装防止に向けた法令の策定をし始めているとのことです。新しい法令によって、基準が明確になっていくことを期待しています。
執筆者:弁護士法人キャストホーチミン事務所の島崎雄太郎さん

 

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