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公開日:2020/02/21

ベトナム法における不可抗力事由と新型コロナウィルス(肺炎)についての考察

ベトナム ホーチミン 新型コロナウィルス ベトナム法 不可抗力事由

 

1 はじめに

中国では、死者数が1300人を上回る(2020年2月13日現在)等、以前として新型コロナウィルスが猛威を振るっております。ベトナムでも、ホーチミン市教育訓練局が市内教育施設の休校措置を2月16日まで延長することを決定したり、中国を始めとする新型コロナウィルスの発症地域への渡航歴のある外国人労働者に対して一部の自治体が労働許可証の発行を行わない措置をとったり等、社会的にも経済的にもその影響は無視できないものがあります。
今後の感染状況によっては、中国からの原材料の調達ができずに約束の納期までに製品が納品できない、政府の勧告でイベントが開催できなくなった等が増加してくると予測されます。
そこで、今回は新型コロナウィルスを理由として契約上の義務が履行できない場合に、ベトナムにおける不可抗力事由に該当するかについて検討していきたいと思います。

 

2 ベトナム法令上の不可抗力事由
1)ベトナム法上の規定

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ベトナムでは、民法156条1項中に、「不可抗力の事象とは、予見することができず、必要で能力が許す限りの措置をすべて適用したとしても克服することができない、客観的に生じる事象である。」とその定義が記されています。
また、同法352条2項には「義務者が不可抗力の事象により義務を正しく履行しない場合、民事責任を負わない。ただし、異なる合意がある又は法令に異なる規定が有る場合を除く。」と規定しています。
その他商法上にも、294条1項b号に、不可抗力事由が発生した場合には免責事由となる旨の記載があります。しかし、民法352条2項但書に相当する規定は存在しません。
民法と商法は一般的には、一般法と特別法の関係にあり、どちらも適用される場面では、商法の規定が適用されるのが原則です。商事行為において民法352条2項但書の適用が排除されるようにも思えますが、現行の商法が2001年施行なのに対して民法は2015年施行であること、契約の一般原則は両者で自由に締結内容を決めることができる(契約自由の原則)であることからすると、商事行為においても、民法352条2項但書の規定が適用されるものとして契約書等を作成すべきでしょう。

2)日本法との比較

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日本法では民法419条3項によって、金銭債務については不可抗力事由があっても責任を免れないとなっています。日本であれば、不可抗力事由が発生した場合※に、契約書上に“不可抗力事由の発生は代金の支払いを免れない”といった規定を設けていなくても、前記419条3項の規定を根拠に代金の支払い請求ができます。しかし、ベトナム法令上には同様の規定がありません。金銭債務の履行において不可抗力といえる事象が発生する場面は想定し難いようにも思えますが(どんな手段を尽くしてもお金が払えないという状況は、そもそもその社会自体が正常に機能していない可能性があります。)、もし不可抗力事由による金銭債務の免責を認めたくないと考える場合には、前記の民法352条2項但書にしたがって、この旨契約書上に明記したほうが良いでしょう。
※日本の法令上には、不可抗力を定義する規定は存在しません。一般的に学説上「不可抗力」とは、「外部からくる事実であって、取引上要求できる注意や予防方法を講じても阻止できないもの」等と説明されます(我妻栄=有泉亨=清水誠=田山輝明『我妻・泉コンメンタール民法―総則・物権・債権〔第3版〕(日本評論社、2013年)』769頁参照)。

 

3 不可抗力事由に対する解釈について
1)法律要件

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ベトナムにおける不可抗効力事由の定義は前記の通りですので、法律要件を整理すると、①客観的で予見不能な事象であること、②できる限り手を尽くしても、その事象から発生する不利益を排除できないこと、となります。
新型コロナウィルスのような伝染病の流行については、客観的で、かつ契約締結時点で予見が不可能な事象に該当するものといえます。一方、できる限り手を尽くしても、新型コロナウィルスの流行による不利益を排除できるかについては法律要件を充足するか明らかではありません。
例えば、従業員が大量に休んで業務の通常運転が困難であるが、高額の手当を支払えば代替人員が確保できる場合などは、不可抗力事由といえるか微妙な状況ですし、そもそも感染予防に対する義務を事前に尽くしていたかという点も論点になり得るでしょう。

2)ベトナムの判例

ベトナムの最高裁判所が運営するウェブサイト(http://congbobanan.toaan.gov.vn/)では、伝染病を原因とする不可抗力事由に関する判例はありませんでした。
事例の性質は異なりますが、債務不履行の免責事由のひとつである客観的事由について判断した判例25/2018/AL号は参考になりそうな事例の一つです。なお、この客観的事由とは、同判例は民法の規定に言及していないため、法令上の概念とは同一といえませんが、概念としては不可抗力事由における「客観的な事象」に類似するものとして参考になります。当該事案は、不動産の売買において、所有権証明書の変更が遅滞していたものです(正確には預かり金の返還請求訴訟で事案の概要等も公表されていますが、本稿と関係ない部分は省略して記載します)。被告は、所有権証明書の変更が遅滞した理由は、国家機関が変更の手続きを遅滞したためで、自らに帰責性はないと主張しました。最高裁は、この被告の主張を認めて被告に帰責性はないと判断しました。
公表されている範囲では、被告がどの程度国家機関との折衝を行っていたか明らかではありませんが、国家機関の行為を理由として債務の履行ができない場合には、不可抗力事由に該当すると判断される可能性が相当程度あるといえます。

 

4 今後の対策等
1)現状を基準とした分析

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中国においては例えば上海市で2月9日まで業務を再開しないようにと通知がでていますが、ベトナムにおいては今のところ同様の通知はなされていません。2020年2月13日時点で保健省が公表したところによると、ベトナム国内の感染者数は16人となっています。また、今のところ中国からの原材料輸入に関して大きな混乱が生じているとの話も耳にしません。これらの事実からすると、現在のところ新型コロナウィルスを原因とする納期遅れを不可抗力事由として主張するのは難しそうです。最も、感染者が判明した工場などにおいて国家機関から一時的な操業停止を求められた場合には不可抗力事由を検討する余地があることになります。
また、イベントについては首相、文化スポーツ観光省や労働傷病兵社会省等から、会合やシンポジウムなど、多くの人が集まるイベントの開催は控えるよう指示がありましたが、全てのイベントを禁止するものではありません。したがって、現状で当該指示に基づいてイベントを中止した場合にこれが不可抗力事由といえるかは微妙な状況にあります。イベントの開催等に当たっては以下の点に注意すべきです。

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ベトナムにおいてはイベントの開催につき、法令上国家機関の許可を求めなければならないものも多いです。イベントの開催が出来なかった場合に不可抗力事由を主張することの前提として、まずはこの許可申請をきちんと履行していたことは重要になると思われます。イベント実施に向けて全ての義務をきちんと履行していることが不可抗力事由を主張することの前提となりますし、また国家機関から不許可の判断を得た場合にはそのこと自体が不可効力事由であることの有力な間接証拠となり得るからです。

2)今後の対策

以上記載してきたとおり不可抗力事由といえるかは複雑で微妙な判断が求められます。したがって、事後的に不可抗力事由を主張することを前提として意思決定をするのは得策ではありません。新型コロナウィルスによる債務不履行の危険が予想できる場合には、その時点で対策を行っていくことが肝要になります。納期に間に合わなさそうな場合には予め納期の延長を行う等、当該時点で契約当事者双方の認識をすり合わせて事後の対応についての合意を形成しておくことが最も賢明な対応だといえます。

島崎 雄太郎 【執筆者】島崎 雄太郎 Facebook 弁護士法人キャストハノイ支店長
日本国弁護士
ベトナム外国弁護士
2016年に司法試験に合格し、司法修習(70期)を経て国内法律事務所に勤務。企業法務や一般民事事件等を手がける。2019年から弁護士法人キャストに参画。 弁護士法人キャストHP https://cast-vietnam.com/
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