公開日:2021/09/17
ベトナムにおけるビジネスラインと事業活動について
1. ベトナムにおけるビジネスライン
ベトナムにおいては、その事業活動に当たってVSIC(Vietnam Standard Industrial Classification)コードの登録が必要となります。VSICコードは企業がどのような事業活動を行うか申告し登録するもので、VSICコードの詳細については、決定27/2018/QD-TTg号(以下、「決定27号」といいます)に記載されています。
これに加えて外資企業はCPC(Certificate of Professional Competence)コードの登録が必要となります。CPCコードとは、ベトナムがWTO(世界貿易機構)に加盟する際にした、サービス分野に関して外国投資家に対して一定の市場開放をする旨のコミットメント(通称「WTOコミットメント」といわれるものです)中で使われている番号のことです。
本稿では、設立後に会社が行う事業と上記のVSICコードとの関係について記載いたしますが、設立の際のVSICコードや、CPCコードの登録については、下記のJETROが作成した「ベトナム拠点設立マニュアル」に有益な情報が記載されています。設立時のことが気になる方は下記の資料等もご参照になって下さい。
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2018/ed272f032fec21e9/vn_manual201811.pdf
なお、以下でいうビジネスラインは原則としてVSICコードのことを指します。
2. ビジネスラインと事業活動
特にローカルの会社においては、必ずしもビジネスラインに則って事業活動を行っていないのが現状です。外資に対しても現状のところ摘発事例は多くなく、登録していない事業活動を実施することにそれほど抵抗感がない方もいるかもしれません。しかし、登録していないビジネスラインに関わる事業活動を行うことは法律的には違法となります。会社組織の場合、登録されていない事業活動に従事している場合、3000万から4000万VNDの範囲で罰金を科される場合があります(政令50/2016/ND-CP号第13条第5項)。
現状こちらの罰金はそれほど科せられていないようですが、より現実的な事項として会計処理の問題があるようです。すなわち、登録していないビジネスラインに関わる事業活動については、登録されていない事業活動に関わる費用を損金として処理できないことがあり、罰金よりもこちらの方が問題として顕在化する場合が多いとの印象があります。
3. 名目と実情が異なる契約に関わる問題
会計処理を行うため、契約等の名目を登録されているビジネスラインの範囲内にする場合も散見されます。例えば、本当は別のサービスの提供をしているのに、コンサルティング契約とするような場合です。最後にこの場合に内在する問題点について記述しようと思います。
民法(91/2015/QH13)第124条は、ある民事取引であることを隠ぺいするために、別の取引を装った場合、当該取引は無効になると規定されています。したがって、登録したビジネスライン外の事業を実施する際、会計処理のために別契約を締結することも行われていますが、相手方の都合が悪くなった場合に当該契約の無効を主張されるリスクがあります。この点は十分注意が必要となります。
4. まとめ
以上のとおり、原則として登録していないビジネスラインに関わる事業を行うことは違法であり、罰金を科せられたり、当該事業に関わる損金について会計処理できない等の問題が生じ得ます。会計処理の問題をクリアにするために、別名目の契約を締結する場合がありますが、この場合は契約の無効を主張されるリスクが内在します。
現状はビジネスラインに関わる摘発は厳しく行われていませんが、今後はこの状況が変化する可能性もあります。また上記のようなリスクも存在します。新規のビジネスラインの登録には費用や時間がかかる場合もありますが、繰り返し行う事業活動については、適切なビジネスラインを取得しておくことが推奨されます。