公開日:2021/08/20
ベトナム コロナによるホーチミンのロックダウンと海外(ドイツ)の過去のロックダウン比較
海外のコロナ感染拡大~ロックダウン~感染抑制の流れを俯瞰する意味
ホーチミンでは今月(2021年8月)社会隔離措置(ロックダウン)の最も厳しい16号+の再延長が決定し、在住者の間ではため息も聞こえました。
中には、「次はどんな変更があるのだろう」「いつまで規制は続くのだろう」と、先行きが分からず不安になる方も多いのではないでしょうか?
確かにベトナム国内ではホーチミンが感染者数最多でフロントランナーとなり、今後の見通しが立てづらいです。
ですが昨年から今年にかけて、ベトナムがコロナ対策の優等生と言われている間に、欧米ではコロナ第一波~第三波で感染拡大し、今のベトナム(ホーチミン)のように都市のロックダウンが長期間行われていました。
今回は一旦視野を変え、海外でのコロナ感染拡大~抑制までの流れを俯瞰し、今のベトナム(特にホーチミン)と比較ができればと思います。
なぜドイツを例として挙げるのか
今回、比較対象としてドイツを選んだ理由は、単純に人口が近しいからです。
人口比較
ベトナム:約9,762万人
ドイツ:約8,319万人
※日本外務省データ
もちろん、ドイツとベトナムでは医療体制や各年代の人口比率も違い、また流行したタイミングが異なるのでコロナの型も異なります。
そのためドイツと同じような期間で感染拡大~ロックダウン~感染抑制になるとは限りませんが、似ている点(ロックダウン延長の繰り返し。外出制限や移動規制など)などもあり、「他の国も通った道だ」と思える部分もあるかと思います。
ドイツのコロナの流れ概要【2020年2月の第一波~2021年現在の第四波まで】
第一波 2020年2月~5月
2月から感染者数は増えたが、部分的にロックダウンや規制を行い4月上旬より減少傾向になる。制限が緩和された5月頃には感染者数は落ち着いた。
その後も一部クラスター等は発生するものの感染者数の急増は抑えられ、秋ごろまで規制は緩和されていた。
第二波 2020年10月~2021年3月上旬
10月頃から新規感染者が増加。
11月から部分的にロックダウンを行い、12月よりロックダウンも本格化。
その後2021年2月頃に新規感染者数が減少。3月初旬より規制が徐々に緩和される。
第三波 2021年3月半ば~5月
規制が緩和され始めたものの、3月半ばより新規感染者が急増。
4月からは夜間外出禁止など、全国一律の厳格なロックダウンが初めて導入された。※それまでは、州ごとに規制内容が異なっていた。
感染者は若年層が多く、死者数は第二波に比べて抑えられていた、という特徴がある。
第四波 2021年6月~現在
現在はインド由来のデルタ型の感染が拡大。
以上がこれまでのドイツのコロナに関する流れになります。
ざっと流れを見た中だと、第二波(最初の本格的な感染拡大。厳格なロックダウンが実施され、ワクチン接種も開始)が、現在(2021年夏~のベトナムのコロナ第四波)に近いのではと思います。
以下、ドイツのコロナ第二波の流れを時系列でもう少し詳しく見ていきたいと思います。
ドイツのコロナ第二波
2020年10月
・コロナ感染者が急増
2020年11月
・11月2日より飲食店の閉鎖など部分的なロックダウンが開始。ロックダウンの期限は一旦11月末までと設定。
・24時間の新規感染者数は2万人弱ほどと高水準が続く。
・11月25日の統計によると、過去24時間の新型コロナウイルスによる死者は410人となり、過去最多となる。
・各州にて、ロックダウンを最短でもクリスマス前まで延長することを決定。
2020年12月
・24時間あたりの新規感染者は約3万人、死者数は約600名と、過去最多を更新する。
・クリスマス前までのロックダウンも、2021年1月10日まで再延長を決定。
※12月26日より、高齢者など優先度の高いグループよりワクチン接種を開始。
2021年1月
・1月5日、ロックダウンの強化および延長(1月31日まで)を決定。
→1月19日には、ロックダウンの2月14日までの延長を再決定。
人口比で感染者が多い地域のロックダウン強化の内容は以下など。
・移動制限(半径15キロ以上の移動)
・飲食店の営業禁止または制限
・マスク着用義務の強化(公共交通機関の使用時などは、医療用マスクの着用が義務付けられる)
・新規感染者数の24時間あたりの平均は1万人強で、12月後半(3万人越え)に比べると落ち着きを見せる。
2021年2月
・2月10日、ロックダウンを2月14日から3月7日まで延長を決定。
・新規感染者の数は落ち着き、1日の7,000人前後となる。(しかし、感染力の強い変異株への警戒もあり、延長が決定)
2021年3月上旬
・3月3日、ロックダウンを3月28日まで延長することを発表。
しかし地域の感染状況に応じて規制を段階的に緩和する計画も発表。8日以降は書店や生花店の営業再開や、地域によっては博物館や屋外でのレストランの営業、小規模なイベントの開催を認めていく方針。
まとめ
いかがでしょうか。
ドイツでは、11月から部分的に実施されたロックダウンも12月以降に本格化。期間も月末まで、1月まで、2月まで・・・と、現在のベトナムのように度々延長・厳格化されていました。またその間には、ビッグイベントのクリスマスも挟んでおりました。
感染者数の比較
ドイツコロナ感染の第二波のピークは2020年12月の後半で、24時間の新規感染者は約3万人の時もありました。ですが2021年1月には1万人強、2月には1万人弱ていどにまで落ちつき、3月初旬よりロックダウンは続けるものの規制緩和の流れとなりました。
対してベトナムでは、執筆している8月18日現在まででは、8月14日発表時の新規市中感染者9,710名が最多となっています。
ワクチン接種について
ドイツでは2020年12月末よりワクチン接種が開始されましたが、高齢者等の優先度が高い方が対象で、4月初旬に開業医でも接種が可能になるまでは接種スピードは遅かったと言われています。
対するベトナムでは2020年7月よりワクチン接種キャンペーンが実施され、ホーチミンでは同年8月中にホーチミン市内に住む18歳以上の人口70%にワクチンを投与(ワクチンが十分に確保できた場合は18歳以上の全人口を目標)すると発表しています。
ベトナム政府発表情報によると、現時点(8月18日)では、18歳以上で少なくとも1回目の接種を受けている人の割合はベトナム国内全体では21.8%、ホーチミンは68.2%とベトナム国内で最多です。
冒頭にご説明した通り、状況が異なるため単純にドイツの流れ通りとはいかないかと思います。
ですがドイツでは第二波の感染拡大がピークに達するのとほぼ同時期にワクチン接種が徐々に開始され、ロックダウンも厳格化、そしてワクチンが広く普及される前にいったん感染は落ち着いています。
ホーチミンの場合は感染拡大と合わせてワクチン接種が加速しました。また新規感染者数もベトナムより人口が少ないドイツが第二波のピーク時は約3万人に比べ、1万人弱と抑えられています。(医療体制の脆弱さなどももちろん考慮する必要はありますが)
ベトナム国内のみに目を向けるとまだまだ厳しい局面は続きますが、海外では先にそれらを経験し一旦は感染抑制できた国もあります。国内で前例がない場合は国外にも目を向けてみたら、意外な共通点や発見もあるかと思います。