公開日:2020/09/11
ベトナムにおける外国人労働者の労働組合費の負担について
1 はじめに
ベトナムにおいて、労働組合の存在が重要なのは皆様耳にしたことがあると思います。
(私が過去に執筆した、
ベトナム労務シリーズ② 労働組合 https://919vn.com/column/labor-management2/
ベトナム労務シリーズ② 労働組合2 https://919vn.com/column/labor-management3/
もご参照下さい。)
しかし、意外と認識されていないのが、外国人労働者の労働組合費についてです。今回はこの点について解説していきます。
2 労働組合費の負担が求められる外国人労働者について
労働組合法第4条1項は「機関、組織、企業に就労しているベトナム人労働者は労働組合を結成し、これに加入し活動する権利を有する」と規定しています。したがって、外国人労働者は労働組合の加入対象となりません。
しかし、2020年3月31日付ホーチミンの労働連合組合(ベトナム語:LIÊN ĐOÀN LAO ĐỘNG THÀNH PHỐ HỒ CHÍ MINH)発行のSố: 05/HD-LĐLĐ第1項によれば、政令191/2013/NĐ-CP号第5条、及び政令143/2018 / ND-CP号(以下「政令143号」といいます)第2条1項に基づき、使用者は以下の義務を負うとされています。
・法令で規定されている強制社会保険の対象となる外国人労働者を雇用している使用者は、労働組合費を支払わなければならない。
・労働組合費は、社会保険料の基礎となる給与額の2%に相当する。
・当該労働組合費の支払い対象時期は、2018年12月1日からとする。
そのため、使用者は、強制社会保険の対象となる外国人を雇用している場合は、その外国人に関わる労働組合費を納付しなければなりません。
なお、前記のとおり外国人労働者には、労働組合への加入権がないので、組合費について労働者の給与から天引きされる部分はありません。
(詳しくは、https://919vn.com/column/labor-management2/ の3労働組合の設立の流れ、4)組合費の納付について、表中の「労働者(給与から天引きされます)」の部分をご覧ください。)
3 強制社会保険対象となる外国人労働者とその例外について
上記のように、労働組合費の負担が求められる対象となる外国人労働者かどうかは、強制社会保険の対象となる外国人労働者がどうかで決せられることになります。法令上、強制社会保険の対象となる外国人労働者、及びその例外は以下のように定められています。
1)政令第143号第2条第1項は強制社会保険加入対象となる外国人について、
“ベトナムの管轄機関によって発給される労働許可書、実務証明書または実務公認書を持ち、ベトナムにおける使用者と無期限労働契約、満1年以上の有期限労働契約を締結する、ベトナムで就労する外国人労働者が強制社会保険の加入対象となる”
と定めています。
2)ただし、政令143号第2条2項は前記の同条1項の例外として、
“2. 本条1項で定める労働者で以下に該当する場合、本政令で定める強制社会保険の加入対象外となる。
a) 労働法のベトナムで就労する外国人労働者関連条項の施行細則を定めた2016年2月3日付政令11/2016/ND-CP号第3条1項で定める企業内人事異動者
b) 労働法第187条1項で定める定年に達した労働者“
と定めています。
3)そして、労働法のベトナムで就労する外国人労働者関連条項の施行細則を定めた2016年2月3日付政令11/2016/ND-CP号第3条1項によれば、
“企業内人事異動の外国人労働者とは、ベトナム現地商業拠点を設立した外国企業の管理者、代表取締役社長、専門家、技術的な労働者として当該企業に12ヶ月以上前に採用され、企業内からベトナム現地商業拠点に一時的に異動する者をいう。”
とされています。
なお、上記の企業内人事異動に該当する方であれば、労働許可証に企業内異動であることを示す記載があるはずです(昨年、労働許可証の申請フォームが更新される前に取得された労働許可証については、労働許可証自体ではなく、労働許可書の申請書を確認する必要があります)。
4 まとめ
① 企業内の人事異動者は、1)の「外国人労働者」に当たるものの、強制社会保険の加入対象外となるため、労働組合の支払い対象となる外国人労働者には該当しないことになります。
② 一方、企業内の人事異動者に該当しない場合、強制社会保険の加入対象者となるため、労働組合費の支払い対象となります。
③ したがって、企業内の人事異動者に該当しないかぎりは、外国人労働者であっても原則として社会保険料の納付対象となるとともに、2018年12月1日以降は、労働組合費の納付対象にもなっていますのでご留意ください。