公開日:2026/01/16
【組織の発展】ベトナム拠点の現地化を成功させる「権限移譲」
─日本式の強みを活かすローカライズ戦略─
新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
2026年に入り、昨年度の決算対応など特にお忙しい時期を過ごされている事とではないでしょうか。

ベトナムの経済成長に伴い、現地を市場として組織を作られたり再編を行われている企業様も多く、その成功のカギとなるベトナム人管理者および経営層への登用による人材の現地化が課題となります。
「現地化(マネジメントの移譲)」において、日系企業に求められているのは、日本企業が本来持つ「人を育てる文化」や「チームの一体感」といった強みを、いかにベトナムの労働市場や価値観に合わせて「ローカライズ」できるか。これこそが、駐在員・経営者の方々に課せられたミッションと言えるでしょう。
前回及び前々回のコラムでは、継続的な「成長機会」の提供の重要性を説きました。今回は現地のミドルマネジメント層をどう「自走」させていくか、その実践的なアプローチを紐解きます。
【人事労務コンサルティング】ベトナムにおける人材の離職率改善戦略Ⅱ ―事例で学ぶ、テト明け離職を防ぐ具体策― – ホーチミン転職・就職 クイックベトナム
【人事コンサルティング】ベトナムにおける優秀人材の離職率改善戦略 ─日系企業の課題と実践的アプローチ─ – ホーチミン転職・就職 クイックベトナム
1. なぜ「良かれと思った」日本式マネジメントが壁にぶつかるのか?
日系企業のマネジメントは、世界的に見ても「教育」と「品質」に対する意識が極めて高いのが特徴です。しかし、その良さがベトナムの現場では少し違った形に翻訳されてしまうことがあります。
➣ ① 「背中を見て覚える」と「指示の具体性」の乖離
日本特有の「阿吽の呼吸」は、暗黙知を共有できる高い同質性を前提としています。一方、ベトナムでは「何が成功で、何が失敗か」の定義を1から10まで言語化して初めて、現地マネージャーや一般社員は安心して動くことができます。
➣ ② 「責任」の捉え方の違い
2025年のJETRO調査でも、ベトナムにおける経営上の課題として「現地従業員の育成」が約5割、「マネジメントの現地化」が約4割の企業で挙げられています。日系企業において権限移譲が進まない背景には、日本人が抱え込んでいるだけでなく、現地のマネージャー側も「不明確な権限に伴う責任(失敗のリスク)」を回避したいという心理が働いている側面があります。
2. 【実践】日本式の強みを活かす「3つのローカライズ・アクション」
欧米企業のような「結果が出なければ即交代」という手法は、日系企業のカラーには馴染みません。日本らしい「伴走型」の権限移譲を実現するための、より具体的な展開図と仕組みを解説します。
➣ ① 決裁権限の「グラデーション化」展開図
一気にすべてを任せるのではなく、業務の重要度と本人の習熟度に合わせて「鍵」を一つずつ渡していくイメージです。
| 成長フェーズ | 権限の範囲(具体例) | 日本人駐在員の関わり方 | 期待されるマネージャーの動き |
| Lv.1:共同遂行 | 経費精算、一般社員の勤怠承認、定型報告 | 「実演と観察」:一緒に実務を行い、判断基準を背中で見せる | 指示通りに正確に実行し、プロセスを遅滞なく報告する |
| Lv.2:条件付譲譲 | 採用一次面接、チームの進捗管理、顧客対応 | 「承認と修正」:部下が作成した案に対し、なぜその判断をしたか問い、修正する | 自ら案を策定し、「なぜそうしたか」の論拠を論理的に説明する |
| Lv.3:完全譲譲 | 一次人事評価、規定額内の発注、業務改善 | 「例外監視(モニタリング)」:通常業務は任せ、イレギュラー時のみ介入する | 自身の責任で判断を下し、事実と結果に基づく事後報告を行う |
💡ポイント: 「任せた」と言いつつ細かい口出しをしないためには、あらかじめ「この金額、この範囲までは報告不要」という指標を作成し、共有することが不可欠です。

➣ ② 「心理的安全性」を仕組みで担保する(1on1の具体化)
「面子」を重んじるベトナム文化において、失敗の報告は敗北を意味します。これを「組織の財産」に変える仕組みが必要です。
・「バッドニュース・ファースト」の評価項目化: 人事評価の中に「トラブルの早期報告」という項目をあえて追加します。単に「早く報告しろ」と言うのではなく、早く報告したことで損害が最小限に抑えられたケースを誉めてあげる文化を作ります。
・週1回15分の「相談専用枠」: 報告(Report)ではなく、相談(Consult)のための時間です。一般社員との接点が多いマネージャーに対し、「困っていることはないか?」と問いかけ、彼らの思考を訓練します。
➣ ③ 共通言語としての「可視化(KPI)」とPDCA
日本式の「プロセス重視」を納得感のある形で伝えるには、数字(結果)への変換が必要です。
・業務プロセスの数値化: 「もっと丁寧に、正確に」ではなく、「エラー率を〇%以下に保つための、ダブルチェックの実施率」を数値化します。
・マネジメント成果の定量化: マネージャーが一般社員を適切に指導した結果、チームの離職率が下がったり、目標達成率が上がったりしたことを可視化します。「日本人上司の主観」ではなく「客観的な数字」で評価される安心感が、彼らのプロフェッショナリズムを刺激します。
3. 現地化推進のキーワード: 「ハイブリッド・マネジメント」の深化
これからの成功モデルは、日本式の「プロセス・品質へのこだわり」というエンジンを、ベトナム流の「スピード・適応力」というタイヤで駆動させるハイブリッド型です。具体的に何をどちらが担うべきかを整理します。
✔ 日本側が提供する「不動の基盤(Infrastructure)」
・公平・公正な「審判」としての機能: 評価エラー(好き嫌いや直近のみ見るなど)を監視し、全社員が納得できるフェアな土俵を維持し続けること。
・長期的なビジョンと哲学の伝承: 5年後、10年後にこの拠点がどうあるべきか、会社の「創業の精神」を語り続け、企業文化の支柱となること。
・グローバル・コンプライアンス: 汚職防止や安全基準など、譲れない一線を守る「防波堤」としての役割。
✔ ベトナム側が実行する「機動力(Execution)」
・一般社員への「人心掌握」によるリテンション: 日本人が入り込めないローカルな悩み(家族の問題、社員同士の人間関係)をケアし、チームの結束を高めること。
・ローカル・スピードでの意思決定: 刻一刻と変わるベトナム市場や当局の動きに対し、現場レベルで最適な判断を即座に下すこと。
・「日本品質」の現地語による翻訳: 日本のこだわりやサービス水準を、現地の言葉と文脈で一般社員に納得感のある形(自分たちの市場価値向上に繋がるメリット)として伝え直すこと。
まとめ:現地化は「放任」ではなく「信頼の設計」
ベトナム拠点の価値を最大化させるのは、日本人駐在員の献身的な労働時間だけではありません。駐在員の皆さんの役割は、現場を回すプレーヤーから、「自分がいなくても、日本品質が自律的に再生産される仕組み」を創るプロデューサーへと進化することです。
本コラムが皆様における現地化推進の中で「任せ方」と「支え方」の仕組みをアップデート頂くための参考となれば幸いです。
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