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ベトナム労務シリーズ④ 産前・産後休暇の概要等

ベトナム ホーチミン 産休制度 産休 出産休暇 労務

 

1 はじめに

今回はベトナムにおける産休制度について解説していきます。産休制度ではありませんが、その他妊婦、育児中の女性に対する法令上の保護についても一部記載します。

 

2 産休を取得できる者、及び産休の期間について
1)女性労働者

①出産休暇
ベトナムの女性労働者は、原則として出産前後で6か月の休暇をとることができます。このうち、出産前の休暇期間は、2ヶ月を超えてはならないとされています(労働法157条1項)。もっとも、実際の出産日は休暇の取得前には確定できませんのでここでいう2ヶ月の起算点は出産予定日となります。
また、休暇の期間は6ヶ月とされていますが、①労働者と会社の合意、②医師からの診断書取得、を条件として、最短4ヶ月で職場復帰することができます(労働法157条4項。以下、この職場復帰を「早期復帰」といいます)

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②出産前の検診休暇(以下「検診休暇」といいます)
女性労働者は、出産前検診のため原則として5日間の休暇を取ることができます(社会保険法32条)。
③出産後の健康回復、リハビリ休暇(以下「リハビリ休暇」といいます)
出産後に健康状態に不安のある女性労働者は、前記①の出産休暇に加えて、5日~10日の範囲でリハビリ休暇を取得することができます(社会保険法41条)。

2)男性労働者

男性労働者も妻の出産後に、原則5日間の産休を取得することが可能です(社会保険法34条2項)。
なお、日本では男性従業員が産休を取得することを規定した法令はありませんが、育児休業・介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律に基づいて育休を取得できる場合が規定されています。逆に、ベトナムではこの育休に相当する規定は法令上ありません。

 

3 産休期間中の給与、社会保険給付について

前記の休暇中、会社は労働者に対して給与を支給する必要はありません(労働法186条2項)。但し、労働者が社会保険料の給付を受ける手続きについては、会社が労働者に代わってその申請手続きを行う必要があります(社会保険法21条項)。会社は、労働者が職場に復帰してから45日以内に、申請する給付の内容に応じて出生届の謄本等の必要書類(社会保険法101条参照)を提出してもらい、これを申請書と共に社会保険機関へ提出します(社会保険法102条2項)。

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以上は、会社がきちんと社会保険料の納付を行っていることが前提です。仮に会社が社会保険料の納付を怠たることにより労働者が社会保険給付を受けられなかった場合、会社は従業員に対して本来給付を受けることができたはずの金銭を給付する義務を負います(社会保険法21条2項、31条2項・3項、official letter1741号(1741/LĐTBXH-BHXH)参照)。

1)女性労働者

① 出産休暇の場合、給付月額として、休暇前の社会保険料算出給与の6ヶ月分を平均した額の100%(以下「給付月額」といいます)を社会保険給付として受給することができます(社会保険法39条1項a号)。会社が給付の申請を適正に行ってから、10日以内に給付金が振り込まれます(社会保険法102条3項)。
ただし、社会保険料に関わる給付は公務員の最低賃金の20ヶ月分とされています(社会保険法89条1項~3項)ので、当該額を超えて給付がなされることはありません。
※参考として現在と2020年7月からの公務員の最低賃金額と、前記の給付金の上限金額を記載します。
・2019年7月(現在)〜 149万VND/月 →20ヶ月 2980万VND(約15万円)
・2020年7月    〜 160万VND/月 →20ヶ月 3200万VND(約16万円)

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② 検診休暇の場合、1日あたり、給付月額に相当する金額を24で割った金額を社会保険給付として受給することができます(社会保険法39条1項b号)。
例えば、社会保険料の給与基準額が1500万ドンで、3日検診休暇を取得した場合、15,000,000÷24×3=1,875,000
で、女性労働者は18万7500ドンの給付を取得することが可能です。
③ リハビリ休暇については、1日当たり、基本給与額の30%を受給することができます(前記社会保険法41条3項)。

2)男性労働者

1日あたり、給付月額給付月額に相当する金額を24で割った金額を社会保険給付として受給することができます(前記の女性労働者の②の場合と同様です)。

 

4 産休中に一時的に仕事(在宅勤務を含む)を頼む場合の取り扱いについて

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法令上、早期復帰の場合について、一時的か恒久的かで区別して規定していません。したがって、産休中の出勤はたとえ一時的なものであっても労働法157条4項に従って行われる必要があります。そのため、出勤を命じる場合には①早期復帰に対する労働者と会社の合意、②認定医療機関からの診断書の取得が必要となります。
女性労働者は、早期復帰をしても社会保険法に基づく給付を受ける権利を失うわけではありませんが、当然会社は労働の対価として給与を支払う必要があります。

 

5 産休後の職場復帰について

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女性労働者は、産休後、産休前と同じ業務につけることが権利として保障されています。したがって原則として復帰後は産休前と同じ業務に従事してもらうことになります。
会社の業務が変更になった関係で、以前の業務が無くなってしまっているときには別業務を行ってもらうこが可能です。しかし、その場合は業務変更を理由とする減給はできません(労働法158条)。

 

6 妊婦、育児中の女性に対する保護

① 妊娠7ヶ月目以降、又は12ヶ月未満の子供を育てる女性労働者に対して深夜労働(22時~6時)、時間外労働、遠隔出張を命じてはいけません(労働法155条1項)。
② 使用者は、結婚・妊娠・産休および12ヶ月未満の子供の育児を理由として、解雇や一方的な労働契約の解除をしてはいけません(同条3項)。
ただし、女性労働者との契約が有期雇用系契約の場合で、契約期間の満了と妊娠・出産時期が重なるときは、有期雇用契約を終了させることができます。これは、結婚・妊娠・産休を原因とする契約解除ではなく、契約期間の満了にともなう労働契約の終了だからです。
③ 妊娠中、産休中、または12ヶ月未満の子供の育児を行う女性労働者に対しては懲戒処分ができません(同条4項)。
④ 12ヶ月未満の子供を育児する女性労働者は、賃金の減額なく、1日に60分の休憩をとることができます(同条5項)。

執筆者:弁護士法人キャストホーチミン事務所の島崎雄太郎さん
【弁護士法人キャストHP】:https://cast-group.biz/service/vietnam/
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