公開日:2021/11/19
ベトナムの退職金制度について
1. はじめに
今回はベトナムの退職金制度について概説します。
最初にベトナムの制度について解説したうえ、駐在員の方向けに日本本社も併せて退職する場合の税務上の注意点についても簡単に記述します。
2. ベトナムの退職金制度
1)退職金の受給資格
ベトナムでは、12か月以上勤務した労働者に対して退職金を支給しなければならないと規定されています(法律第45/2019/QH14号〔以下「労働法」といいます〕第46条第1項)。
2)支給額の計算方法
具体的な退職金の計算方法は法律上以下のとおりです(労働法第46条第1項)。
勤務年数×半月分の給与額(直近6月の平均から算出)= 退職手当の額
3)失業保険基金からの給付
もっとも、法律により労働者が失業保険に加入していた期間は、計算上、上記の勤続年数から控除されるため、退職する労働者が失業保険に加入していた期間については、会社は当該退職者に対して退職金を支払う必要がありません。
そのため、退職者がベトナムでの就業期間中にわたって失業保険に加入していた場合、ベトナムの法令上は、会社は退職者に対して退職金を支払う必要がありません。
なお、失業保険に加入していたことにより会社から退職金が支給されない場合、退職者はベトナムの失業保険基金から手当てを受け取ることができます。
4)失業保険の未加入期間が生じる例
失業保険の未加入期間が生じる例としては、試用期間と産休などの社会保険法に基づく休暇期間があります。
試用期間中は、契約形態により社会保険への加入義務が生じない場合があります(なお、試用期間の終了後に遡って社会保険料を納付することも可能です)。また、使用者は産休期間中に失業保険を納付することができないので、加入期間に間隙が生じることがあります。
そのため、試用期間や産休期間がある場合には、会社に退職金の支払い義務が生じる場合があるので注意が必要です。
3 駐在員の日本法人からの退職金
退職者が駐在員の方の場合で、ベトナム法人のみでなく日本法人も退職して、日本法人からも退職金を受領する場合以下の点について注意が必要です。
ベトナムから帰国する前に日本からの退職金(日本本社から支給の退職金)を受領してしまうと、ベトナムでは支給された退職金が賞与扱いとなり、所得税として課税されてしまいます。 したがって、一般的には日本本社の退職は帰国後に実施することが推奨されます(詳しい取扱いについては税務・会計の専門家の方にご確認ください)。