公開日:2023/07/28
ベトナムの休眠手続について
1. 休眠手続の概要
1)ベトナム事業が上手くいかない場合の選択肢
ベトナム事業が順調にいかない場合、会社が取るべき手段として、いくつかの選択肢が存在します。撤退を検討する場合、ベトナム法人の持分もしくは株式を誰か(他社)に譲渡する、または会社の解散が考えられます。しかし、持分等を譲渡するには、買ってくれる相手方を見つけなければなりません。また、解散をする際には税務調査などが実施されることにより長期間を要する場合もあります。そして、上記の手段を選択した場合には、ベトナム事業を再開しようとする場合には、再度進出をやり直さなければなりません。
そこで、会社を一時的に休眠しておくことが考えられます(ベトナムの法令原文では、「tạm ngừng kinh doanh」、事業を一時停止させると表現されています(法律第59/2020/QH14号(以下「企業法」といいます)第206条第1項)。
2)駐在員事務所には休眠手続が適用されない
休眠手続きについては、事業を行っていることが前提となっています。一方、法律第36/2005/QH11号(以下「商法」といいます)に基づき設立される駐在員事務所は、商法上に認められる事業活動のみ遂行することができ、直接的な営利目的の活動ができないとされています(商法第18条第1項)。
駐在員事務所は法的に完全な営業主体でないとされていることから、企業法上に規定する休眠手続を利用することはできず、事業活動を停止する場合には、政令07/2016/ND-CP号第4章に規定する手続きに従って閉鎖しなければならないとされています。
したがって休眠手続は駐在員事務所については利用できないので注意が必要です。
2. 休眠手続の実施
1)通知等
会社を休眠する場合、休眠する三営業日前までに、管轄機関(事業登録局等)に通知しなければなりません(企業法第206条第1項、政令01/2021/NĐ-CP号(以下、「政令第01号」といいます)第66条第1項)。
通知には、会社の形態に合わせて各意思決定機関(社員総会、株主総会、会社の所有者等)の、休眠についての議決や決定に関わる書面を添付する必要があります(政令第01号第66条第2項)。
2)休眠期間
休眠期間は一年を超えてはならないと規定されていますが(政令第01号第66条第1項)、旧政令において更新が制限されると解される文言が存在していたところ(全部で二年までとされる文言がありました)、政令01号では同文言が削除されています。そのため、再度手続きを実施して休眠期間を更新することができ、休眠期間は二年に制限されないと解します。
この点について、我々が2022年9月19日にホーチミン市投資計画局に電話で問い合わせた際にも上記と同様の回答を確認しています。
3)休眠会社の義務履行
休眠中の会社であっても、公租公課や労働契約を含む契約上の義務が発生する場合、当該義務を履行し続けなければならないと規定されています(企業法第206条第3項)。
そのため、会社を休眠させる場合には、労働契約を終了させておくなど事前に適切な準備が必要となります。