公開日:2021/08/06
【2021年】ベトナムの政治や選挙制度を分かりやすくご紹介
ベトナムの政治や選挙について、どんなイメージをお持ちでしょうか?
社会主義国で共産党の一党独裁だから、何となく怖そう(日本とは全然違う)というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。
実は、ベトナムの政治の仕組みは、他の社会主義国と少し違います。共産党員以外の国会議員もおり、権力の分散も行われています。
今年(2021年)は第15期(2021年~2026年任期)の総選挙が行われ、フックさん(グエン・スアン・フック)が首相から国家主席に昇格するという、建国(1945年)以来初めての例となった、歴史的な選挙でもありました。
今回はそんなベトナムの政治状況をざっくり理解するため、①ベトナム近現代史の概観、②政治権力順序、③ベトナム選挙のQ&A、の順に分かりやすくご紹介します。
ベトナム近現代史の概観
1945年9月
ベトナム八月革命によって、東南アジア最初の社会主義国家である「ベトナム民主共和国」成立。
※それ以前は、阮朝(グエンちょう)という王国で、フランスの支配下にありました。
1946年1月
初の総選挙(国会議員選挙)実施
1946年末
インドシナ戦争勃発
1954年7月
ジュネーヴ休戦協定を締結
(ベトナムは南北に分割され、北ベトナムをベトナム民主共和国が、南ベトナムをベトナム国が統治(~1955年))
1960年(1965年)~1975年
ベトナム戦争
(ベトナム戦争(第二次インドシナ戦争)は宣戦布告がなかったため、開始時期は諸説あります)
1976年7月
ベトナム社会主義共和国(現在のベトナム)の成立
1986年
ドイモイ政策の導入
※ドイモイ政策とは、ベトナム共産党の党大会で発表されたスローガンで、経済や社会思想の発展・近代化を行い、社会を刷新していく政策になります。
具体的には、以下のことを行いました。
・資本主義経済(市場経済)の導入
・国際社会への協調
・社会主義政策の緩和、などなど。
ベトナムの政治体制
ベトナムは中国や北朝鮮と同じ社会主義国(ちなみに、2021年現在の社会主義国はベトナム含め5か国のみです)ですが、ベトナムの政治体制は他の社会主義国とは少し違うことをご存じですか?
ベトナムは共産党の一党独裁ではありますが、権力の分散も行われています。特にドイモイ政策(1986年以降、経済や社会思想の発展・近代化を目指した施策)以降は、共産党と国家機関(国会、内閣、裁判所等)の分権化が進みました。
共産党内の権力順序
上から順に権力が強いです。
①「党書記長」→共産党のTOP!対外(外交)的にも国の代表となる
②「国家主席(大統領)」→国家のTOPだが名目的
③「首相(政府代表)」 →内閣の運営・行政を行う
④「国会議長」 →国会の運営・司法・立法を行う
※2018年以降は、①党書記長と②国家主席が兼任されています。
つまり現党書記長のフックさんが、名実共に国のトップとなっています。
また国家主席の選出については、前期の国会の最後で暫定的に選出され、総選挙の国民投票で最終決定されます。
そのため制度的には、国会で選出された(暫定)国家主席が総選挙(国民投票)で不信任決議を出される可能性もあります。
国の政策決定の流れ
次の流れで計画・実行されます。(上記の権力順序の上から下に流れるイメージです)
1.共産党が国の基本的方針や政策を決める
2.国家機関が立法化・施行を行う
このように、権力の分散や国民投票の機会がある点で、他の社会主義国とは異なる政治体制を築いています。
ベトナムの選挙Q&A
選挙にはどんな種類があるの?
大きく分けると、国会議員選挙と各級人民評議会(地方議員)選挙があります。同じタイミングで選挙が行われます。
何歳から投票できるの?
選挙権は満18歳以上の全ベトナム国民です。ちなみに被選挙権は21歳以上になります。
ベトナム在住の外国人に選挙権はありませんが、二重国籍の人(ベトナム国籍と外国籍をもつ人)は基本的に選挙権があり、海外在住ベトナム人も投票日の24時間前までにベトナムに帰国し投票者リストに登録申請することにより、選挙権が得られます。
議員の任期は何年間?
国会議員・地方議員ともに5年間です。そのため、次回選挙(第16期)は2026年になります。
共産党の一党独裁でしょ?じゃあ議員は全員共産党員なの?
政党は共産党のみのため、共産党員がほとんどですが、実は(共産党)非党員の議員もいます。
以下、VIETJOの記事より今期(第15期)の当選者の内訳に関する記事を抜粋します。
『女性が151人(30.3%)、少数民族が89人(17.8%)、40歳未満が47人(9.4%)、ベトナム人民軍の軍人が32人(6.4%)、非党員が14人(2.8%)となっている。
非党員の当選者は14人と全体のわずか2.8%を占めるに過ぎず、第13期(2011~2016年)が42人、第14期が21人と、大幅な減少が続いている。』
出典:VIET JO
まとめ
いかがでしたでしょうか。ベトナムが社会主義国ながら資本主義・民主主義的な要素もあるという理由が、近代化する中での政治政策や、選挙方法などから、感じて頂けたでしょうか?
日本とは異なる政治・社会・文化のため、最初は戸惑うことも多いとは思いますが、「なぜ違うのだろう?」と背景に目を向けてみると、意外な発見・共通点なども見つかり、面白いかと思います。