公開日:2025/09/05
【労務管理】ベトナムにおける解雇・雇止めに関するトラブル防止のためのポイント
ベトナムでは労働法が厳格に運用されており、解雇・雇止めの対応を誤ると労働紛争に発展する可能性があります。日本と比べて従業員寄りの内容も多く、適切な理解と準備を欠くと「不当解雇」と判断されるリスクが高まります。本コラムでは、最新の法規制を踏まえ、日系企業が現地で安心して労務管理を行うための具体的なポイントを整理しました。貴社の労務リスク低減に役立つ内容となっています。
1. 解雇・雇止めに関する基本原則
📘 主なポイント:
– 解雇は正当な理由が必要(労働法第34条、第36条)。
– 労働契約の種類ごとの対応:
– 妊娠・育児中や病休中の従業員は解雇禁止(労働法第137条)。
– 予告期間:無期契約45日、有期契約30日、12か月未満契約は3日(労働法第35条)。
2. 法的要件:証拠確保と無効となるケース
⚖️ 解雇の有効性を裏付けるには「正当理由」と「客観的証拠」が必須です。
– 業績不良:評価表、KPI達成率、考課記録。
※無効とされやすいところです。最低2~3回連続の基準未達+改善指導後も改善ない場合に認められる可能性がある。
– 規律違反:始末書、警告書、監視映像。
※軽微な違反では足りず、重大または累積的違反が必要。
– 組織再編:取締役会の正式決議と人員削減計画。
※赤字事業撤退や部門閉鎖など経営必然性のある場合に限定。
❌ 無効とされるケース:
・証拠不十分または手続き不備
・妊娠・産休中や病休中の解雇
・労組・従業員代表の協議を経ない場合
3. 解雇手続きフロー
🔄 手順:
1. 理由発生と証拠収集 → 書面化し第三者も確認可能に
2. 労働組合・従業員代表との協議 → 議事録を残す
3. 書面通知(ベトナム語) → 英語や日本語併記で誤解防止
4. 解雇手当支払い(勤続1年以上) → 遅延は追加罰則対象
5. 書類保管(最低3年) → 当局調査に備えて整理
ケース:製造企業で人事評価データ2年分+都度改善指導を提示し、配置転換を行ったが改善がみられず解雇を実施、明確な規則及び基準と記録データもあり当該従業員から不服申入れも無く労働紛争を回避。
4. 雇止めの留意点と無効リスク
📄 有期契約終了は原則自由だが、以下のケースは無効リスクあり:
– 契約更新が複数回行われ、無期契約扱いとされる(労働法第20条)。
– 合理的期待があるにも関わらず説明なく更新拒否をした場合。
– 差別的取り扱いや不当理由で更新拒否をした場合。
💡更新条件を必ず明文化し、従業員に事前説明を行う。
ケース:IT企業で同一社員の有期契約を3回更新後、終了通知を行ったが当該社員が不服を申入れ裁判で「無期契約と同等」と判断され解雇無効となった。
5. トラブル防止のための実務チェックリスト
✅ 実務ポイント:
– 就業規則に解雇理由・手続きを明記。
– 定期面談で課題の把握と記録と保管。
– 内部通報制度や苦情窓口を設置。
– 管理職への労務管理の教育を年1回以上実施。
– 解雇通知書・議事録などを正式に保管。
まとめ
ベトナムにおける解雇・雇止めは厳格な法律要件に基づくため、形式的な不備でも大きなリスクになります。ただし、評価制度や就業規則の整備、証拠確保、労働組合との誠実な協議を行うことで、スムーズで合法的な対応が可能となります。QUICK VIETNAMでは、規則改定・従業員対応・その他日常の労務管理問題や課題解決など現場に即した支援を提供しています。どうぞ気軽にご相談ください。