公開日:2020/10/23
ベトナム特有の税制・外国契約者税(FCT)の基本事項と注意点
ベトナム法人、もしくはベトナム法人と取引をする外国法人の方は、外国契約者税(FCT)について聞いたことがあるかもしれません。海外からベトナムに”物品”を売る=関税がかかる、海外からベトナムに”サービス”を売る=外国契約者税(FCT)がかかる、とざっくりと考えて頂けたらと思います。今回はそんなFCTの基本事項と注意点を簡単にご紹介します。
外国契約者税(FCT)って何?
ベトナム特有の税金になります。具体的には(ベトナムから見て)外国法人・個人・団体がベトナム法人・個人・団体との間で契約を締結し、サービスの提供を行った際にかかる税金です(簡略化のため、以下“外国法人”“ベトナム法人”と記載します)。導入で述べた通り、物品の(ベトナムへの)輸出=関税、サービスの(ベトナムへの)輸出=FCT、が税金としてかかります。
外国契約者税の課税対象はサービス提供を行う外国法人となりますが、海外からベトナム会計制度に則った納税が難しいことから、実際はベトナム法人が支払い時にFCTを控除した金額を支払い、代わりに納税することが多いです。申告納税期限はサービス料金の支払日から10日以内になります。
代表的な外国契約者税(FCT)の計算式
FCTは具体的には付加価値税(VAT)と法人所得税(CIT)からなります。
付加価値税(VAT)とは:日本でいう”消費税”に近い。間接税で、申告・納税は企業が行うが税負担は消費者。
法人所得税(CIT)とは:事業活動によって生じる所得に対する税金。ベトナム法人・外国法人ともにベトナム国内での事業活動により所得を得た際は課税対象となる。
以下の計算式をベースに考えて頂くと分かりやすいかと存じます。
FCT(外国契約者税) = VAT(付加価値税) + CIT(法人所得税)
VAT = 課税対象売上 × VAT税率
CIT = (課税対象売上 – VAT) × CIT税率
※上記の通り、CITは課税対象売上からVATを引いた金額に税率をかけます。
注意点として、輸出加工企業(EPE)はVATが免除されたり、物品のみの輸出入ではFCTはかかりませんが物品の輸出入にサービスが伴う場合(例:機械(物品)輸出および取付サービス)は機械(物品)もFCT課税対象となったりと、適用範囲・変化が多いです。また次の項でご説明する通り、FCTをベトナム法人が負担する場合は計算式が変化します。
外国契約者税(FCT)をベトナム法人が負担することは可能か?
結論から言うと、可能です。ですが負担額が増えます。以下に具体例とあわせてご説明します。
※サービスの内容によって税率は変わります。以下はサービス一般時のVAT、CITともに税率5%を例とします。他の税率はJETROの税率表などをご参照下さい:https://www.jetro.go.jp/world/asia/vn/invest_04.html
FCTを全て外国企業が負担する場合
VAT=課税対象売上×VAT 5%
CIT=(課税対象売上-VAT)×CIT 5%
FCT=VAT+CIT
※例:Amout(net)が9,500,000の場合
VAT=9,500,000×5%=475,000
CIT=( 9,500,000 -VAT( 475,000 ))×5%=451,250
FCT=VAT( 475,000 )+CIT( 451,250 )= 926,250
FCTをベトナム法人と外国企業が分担して負担する場合
VAT={税課税対象売上÷(1- VAT 5%)} × VAT 5%
CIT= {税課税対象売上÷(1- CIT 5%)-VAT } ×CIT 5%
FCT=VAT+CIT
※例: Amout(net)が9,500,000の場合
VAT=9,500,000÷(1-5%) ×5%=500,000
CIT={ 9,500,000÷(1-5%) -VAT(500,000) }×5%=475,000
FCT=VAT(500,000)+CIT(475,000)=975,000
上記の通り、FCTを全て外国企業が負担する場合に比べ、ベトナム法人と分担した場合は課税対象額が増えます。理由として、外国企業の売上に負担すべき税金を含まない場合は、課税対象売上が税込みの売り上げに変換(グロスアップ)されるからです。(上記の計算式では、「 課税対象売上÷(1- 各税率) 」の部分)
外国契約者税(FCT)が納税漏れ・もしくは記載に不備不足があったらどうなる?
支払時には納税漏れや記載の不備不足は分からず、数年後の税務調査で発覚するケースも多々あり、その場合は追徴課税や行政処分などの可能性もあります。
またFCTを納税した場合でも、記載が適切ではない(記載の不備不足。例えばFCTの負担者の記載がない、税込み価格か税抜き価格かの記載がない)場合は税務調査にて指摘され、本来支払うべき額よりも多く払わされるケースもあります(記載漏れに対する罰金ではなく、より負担額が多いサービスや内容だったと認識され、それを否定するための証拠(記載)がないため多く支払わされる、など)。そのため支払い時に指摘がないからと安心をせず、本当にこの記載で不備不足はないか入念に確認が必要です。
海外法人がベトナムへサービスを提供する際、ベトナム法人から契約書や請求書で細かく要求があるかもしれません。慣れない内は「なぜそんなに細かいのか?」と不思議に思われるかもしれませんが、そこは外資系企業に厳しいベトナムで身を守るために必要な手段であり、ぜひご理解頂けたらと思います。またサービスを購入するベトナム法人側も、せっかく納税をしても記載漏れのために後日より多くの税品を支払わされるなどのリスクを回避するためにも、FCTの支払い・記載については常に慎重になる必要があります。
※記事内に間違い等があった場合は、お手数ですが弊社までご連絡をお願い致します。
また本記事は2020年10月21日に記載されており、今後制度変更等が起こる可能性もあるため、詳細は各自でご確認をお願い致します。